二人はアリスの部屋に移動した。アリスは俯いていた。
「ランプは付ける?」
「このままでいいわ」
先ほどあれだけ己の心情を吐露したアリスだが、今は逆に冷静になっていた。そして冷静になればなるだけ顔が紅潮していたので、ランプを付けられるのだけは避けたかった。青年もそんなアリスの状況を理解していたのか、ランプは結局付けなかった。月の光だけが部屋の照明だった。薄暗い部屋の中、二人は並んでベッドに腰掛けた。
沈黙の時間が過ぎる。それは決して居辛くは無く、むしろ二人にとっては最上の時間だった。それでも数分が経った後、青年の方から話を切り出した。
「じゃあ、昔話をしよう。僕がここに来るまでのいきさつをね」
「ランプは付ける?」
「このままでいいわ」
先ほどあれだけ己の心情を吐露したアリスだが、今は逆に冷静になっていた。そして冷静になればなるだけ顔が紅潮していたので、ランプを付けられるのだけは避けたかった。青年もそんなアリスの状況を理解していたのか、ランプは結局付けなかった。月の光だけが部屋の照明だった。薄暗い部屋の中、二人は並んでベッドに腰掛けた。
沈黙の時間が過ぎる。それは決して居辛くは無く、むしろ二人にとっては最上の時間だった。それでも数分が経った後、青年の方から話を切り出した。
「じゃあ、昔話をしよう。僕がここに来るまでのいきさつをね」
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青年が記憶を取り戻してから二日。青年自身はなるべくその事を隠せていると思っているようだが、アリスは薄々分かっていた。他の人は分からないだろう、青年がアリスを見る目が僅かに変わっていた事を。若干の恐怖、おそらく青年すらそれは意識していなかったと思うが、見られる側のアリスはそれを痛切に感じていた。
「今日は僕が片付けるよ」
青年が率先して晩御飯の食器を片付ける。その姿もアリスにはどこかよそよそしかった。食器を洗う青年の背中をボーっと眺めていると、初めて言葉を交わしたときの事を思い出す。
「今日は僕が片付けるよ」
青年が率先して晩御飯の食器を片付ける。その姿もアリスにはどこかよそよそしかった。食器を洗う青年の背中をボーっと眺めていると、初めて言葉を交わしたときの事を思い出す。
消えてゆく青年の姿を見ていた女性の側には、いつの間にか彼女の僕がいた。
「いいのですか紫様、あのような猶予を与えてしまって……」
どうやら僕の方は紫の決定を不服に思っているようだった。そんな僕に紫と呼ばれた女性は怪しい笑みを浮かべて訊いた。
「では、藍。貴方の今見ている景色が全て夢だったと教えられたら、どう思うかしら」
「いいのですか紫様、あのような猶予を与えてしまって……」
どうやら僕の方は紫の決定を不服に思っているようだった。そんな僕に紫と呼ばれた女性は怪しい笑みを浮かべて訊いた。
「では、藍。貴方の今見ている景色が全て夢だったと教えられたら、どう思うかしら」
平和な時の幻想郷には、どんな些細な事でもそれは大事になるわけで。
記憶を失った青年がアリスに保護されているという話は、瞬く間に幻想郷中に伝わり知れるところとなった。
「……なるほど、その時の彼の様子はどんな感じでしたか?」
「様子って言っても、ただ気を失っていただけだし、特に傷らしきものも見当たらなかったわ」
「こんな魔法の森に無傷で気を失って倒れていたわけですか、これは何か事件の匂いがしますね」
「さぁ。私はそんな事に興味はないわ、調べたいなら勝手にどうぞ」
「そうさせて頂きます。取材に協力していただきありがとうございました」
記憶を失った青年がアリスに保護されているという話は、瞬く間に幻想郷中に伝わり知れるところとなった。
「……なるほど、その時の彼の様子はどんな感じでしたか?」
「様子って言っても、ただ気を失っていただけだし、特に傷らしきものも見当たらなかったわ」
「こんな魔法の森に無傷で気を失って倒れていたわけですか、これは何か事件の匂いがしますね」
「さぁ。私はそんな事に興味はないわ、調べたいなら勝手にどうぞ」
「そうさせて頂きます。取材に協力していただきありがとうございました」
ぱちぱちぱちぱち……
拍手の鳴り響く中、青年は目の前の出来事に目を丸くしていた。
「なんだったんだ……?」
一方のアリスは得意顔で人形をしまい、青年の元に寄って来た。子供達はまだ見たりないらしくもっともっととせがむが、アリスはそれをまた今度と上手くかわす。
拍手の鳴り響く中、青年は目の前の出来事に目を丸くしていた。
「なんだったんだ……?」
一方のアリスは得意顔で人形をしまい、青年の元に寄って来た。子供達はまだ見たりないらしくもっともっととせがむが、アリスはそれをまた今度と上手くかわす。