「~で、そしてこれを……」
藍がすらすらと黒板に数式を書いていく。藍の授業は分かりやすいといえば分かりやすいのだが、如何せんレベルが高い。一年間みっちり藍の指導を受けようも のなら、数検一級は確実であろう。だが悲しいかな、この東方塾の塾生はそこまで真面目にやる気のある者の方が少ないのだった。
そうなると、授業に飽きた塾生はどうするか。どこの学校でもあるだろう、ノートの切れ端を使って会話をするのだ。藍は真面目であるが故に隙も大きい。塾生にとってはその隙を狙うことは弾幕の隙間を縫うよりも楽なことだった。
「ん……?」
藍がすらすらと黒板に数式を書いていく。藍の授業は分かりやすいといえば分かりやすいのだが、如何せんレベルが高い。一年間みっちり藍の指導を受けようも のなら、数検一級は確実であろう。だが悲しいかな、この東方塾の塾生はそこまで真面目にやる気のある者の方が少ないのだった。
そうなると、授業に飽きた塾生はどうするか。どこの学校でもあるだろう、ノートの切れ端を使って会話をするのだ。藍は真面目であるが故に隙も大きい。塾生にとってはその隙を狙うことは弾幕の隙間を縫うよりも楽なことだった。
「ん……?」
委員長である霊夢の元にもノートの切れ端が渡される。委員長とはいえ、霊夢は成り行き上でなったものだから世間にありがちな優等生委員長とはいえなかった。送り主は魔理沙らしい、霊夢はさりげなくノートに書かれた字を見た。
「ノート、取っておいてくれ……?」
どうやら魔理沙はさっきの弾幕勝負で疲れていたらしく、ノートを霊夢に頼もうとしていた。しかし霊夢も一筋縄ではいかない。ささっと返事を書き、机の近い魂魄 妖夢にノートの切れ端を渡した。受け取った妖夢は心配そうな顔をして、小声で霊夢に話しかけた。
「ちゃんと授業聞いておかなくていいんですか?」
「えぇ、平気よ。なんせはなから100%理解する気はないのだから。60%理解できれば上出来よ」
「そんな事言わずに、ちゃんと授業受けましょうよぉ」
「それにノートを取る理由の半分は魔理沙の為よ」
「そんなこと堂々と言われても……」
妖夢はがっくりと肩を落とし、ノートの切れ端を魔理沙に渡す。ノートを見た魔理沙は霊夢の方を向き苦い顔をしたが、霊夢は何食わぬ顔でそっぽを向いていた。そのうち魔理沙は諦めて机に突っ伏した。交渉成立の合図だった。
「よし、じゃあノートを取りますか」
報酬があればノートを取る気も起きるもので、霊夢は手早くそれまで黒板に書かれていた式をノートに取り始めた。妖夢がその様子を見て呆れたように呟く。
「はぁ……初めからちゃんと取ればいいのに……」
霊夢がノートを取り始めて少し経った。
「先生」
ある塾生が手をあげる。手を上げたのは藤原 妹紅だった。彼女はいつも反抗的な態度を取ることで教師の間でも話題であった。しかも言うことを聞かせようと弾幕勝負にもって行っても彼女の力は相当強 く、教師ですら歯が立たないことが何度かあった為に今では半ば自由にさせておくしかなかった。
「……なんだ、妹紅」
「トイレ」
「早く帰ってくるんだぞ」
「……フン」
妹紅が教室から出て行く。妹紅のいなくなった教室は、何故か少し安堵の空気が流れていた。妹紅は塾生の間からも少々恐れられており、未だに中の良い友人がいないと噂されていた。
「まったく……妹紅も妹紅だが、皆も皆だ。同じ塾生なのだから、なるべく仲良くやっていくんだぞ?」
その空気を呼んだかのように藍が塾生たちに言う。塾生たちは、皆下を向いていた。その姿からは努力はしているが、それが全て無駄だった、そう言っているようだった。
「ふぅ」
一方教室から出た妹紅は、トイレなどには行かずに外にいた。授業中の外はほとんど人がおらず、妹紅にとっては過ごしやすい場所だった。そして、外にでる一番の理由は実は妹紅が唯一普通に話せる人物と会話をすることだった。
「また授業をサボったの?」
妹紅の横にその人物はいた。保険の先生でもある八意 永琳であった。初めのころは永琳ともぶつかってばっかりだったが、なんどか二人きりで会話をしていくうちにいつしか普通に話をする相手になっていた。
「サボってるんじゃない。ちょっと休憩」
「それをサボってるって言うのよ」
妹紅は自分を恐れずにこうやって普通に話してくれる永琳に好感を持っていた。まともに話したことのない教師ですら自分を恐れるというのに、この永琳は初めて会ったときからこの話し方を変えなかった。
「皆とは仲良くやってるの?」
「まだ……頑張ってるけど」
永琳はため息をついて言う。
「貴方はただでさえ怖いイメージが先行しているのだから、普通よりももっと頑張らなきゃダメよ。そこはわかる?」
「わかってるよ」
そっけなく妹紅は返す。
「自分が本当に頑張ってる姿を見せないと、皆は応えてくれないわ。貴方だって、好きで怖がられているわけじゃないでしょう。仲良くなりたいなら、自分に素直になってもっと積極的になりなさい」
永琳の言っていることは事実だった。事実だからこそ、妹紅は何も言い返せなかった。
「少しだけなら私も手伝ってあげる。これ、本当に辛くなったら飲んでみなさい」
そういって永琳は妹紅に一粒の薬を握らせた。
「……これは?」
「最終手段よ。気持ちを盛り上げたいときに使いなさい。ただ、本当はこんなのに頼らないで自分の力だけで頑
張った方がいいに決まっているのだから、そこは承知しておきなさいよ」
「あぁ、わかってる」
「次の授業は?」
「体育」
「貴方の得意分野じゃない。頑張りなさいよ」
「そうだな……」
運動は嫌いじゃないし、苦手でもなかったがどうしても妹紅は出る事が出来ずにいた。しかし永琳の言葉を受け、妹紅は次の体育からまた少しだけ頑張ってみることにした。
「いい顔よ」
不意に永琳が言う。
「え?」
「なんでもないわ。さ、もう教室に戻りなさい」
妹紅が教室に戻っていくのを確認すると、永琳も保健室に戻った。
「ノート、取っておいてくれ……?」
どうやら魔理沙はさっきの弾幕勝負で疲れていたらしく、ノートを霊夢に頼もうとしていた。しかし霊夢も一筋縄ではいかない。ささっと返事を書き、机の近い魂魄 妖夢にノートの切れ端を渡した。受け取った妖夢は心配そうな顔をして、小声で霊夢に話しかけた。
「ちゃんと授業聞いておかなくていいんですか?」
「えぇ、平気よ。なんせはなから100%理解する気はないのだから。60%理解できれば上出来よ」
「そんな事言わずに、ちゃんと授業受けましょうよぉ」
「それにノートを取る理由の半分は魔理沙の為よ」
「そんなこと堂々と言われても……」
妖夢はがっくりと肩を落とし、ノートの切れ端を魔理沙に渡す。ノートを見た魔理沙は霊夢の方を向き苦い顔をしたが、霊夢は何食わぬ顔でそっぽを向いていた。そのうち魔理沙は諦めて机に突っ伏した。交渉成立の合図だった。
「よし、じゃあノートを取りますか」
報酬があればノートを取る気も起きるもので、霊夢は手早くそれまで黒板に書かれていた式をノートに取り始めた。妖夢がその様子を見て呆れたように呟く。
「はぁ……初めからちゃんと取ればいいのに……」
霊夢がノートを取り始めて少し経った。
「先生」
ある塾生が手をあげる。手を上げたのは藤原 妹紅だった。彼女はいつも反抗的な態度を取ることで教師の間でも話題であった。しかも言うことを聞かせようと弾幕勝負にもって行っても彼女の力は相当強 く、教師ですら歯が立たないことが何度かあった為に今では半ば自由にさせておくしかなかった。
「……なんだ、妹紅」
「トイレ」
「早く帰ってくるんだぞ」
「……フン」
妹紅が教室から出て行く。妹紅のいなくなった教室は、何故か少し安堵の空気が流れていた。妹紅は塾生の間からも少々恐れられており、未だに中の良い友人がいないと噂されていた。
「まったく……妹紅も妹紅だが、皆も皆だ。同じ塾生なのだから、なるべく仲良くやっていくんだぞ?」
その空気を呼んだかのように藍が塾生たちに言う。塾生たちは、皆下を向いていた。その姿からは努力はしているが、それが全て無駄だった、そう言っているようだった。
「ふぅ」
一方教室から出た妹紅は、トイレなどには行かずに外にいた。授業中の外はほとんど人がおらず、妹紅にとっては過ごしやすい場所だった。そして、外にでる一番の理由は実は妹紅が唯一普通に話せる人物と会話をすることだった。
「また授業をサボったの?」
妹紅の横にその人物はいた。保険の先生でもある八意 永琳であった。初めのころは永琳ともぶつかってばっかりだったが、なんどか二人きりで会話をしていくうちにいつしか普通に話をする相手になっていた。
「サボってるんじゃない。ちょっと休憩」
「それをサボってるって言うのよ」
妹紅は自分を恐れずにこうやって普通に話してくれる永琳に好感を持っていた。まともに話したことのない教師ですら自分を恐れるというのに、この永琳は初めて会ったときからこの話し方を変えなかった。
「皆とは仲良くやってるの?」
「まだ……頑張ってるけど」
永琳はため息をついて言う。
「貴方はただでさえ怖いイメージが先行しているのだから、普通よりももっと頑張らなきゃダメよ。そこはわかる?」
「わかってるよ」
そっけなく妹紅は返す。
「自分が本当に頑張ってる姿を見せないと、皆は応えてくれないわ。貴方だって、好きで怖がられているわけじゃないでしょう。仲良くなりたいなら、自分に素直になってもっと積極的になりなさい」
永琳の言っていることは事実だった。事実だからこそ、妹紅は何も言い返せなかった。
「少しだけなら私も手伝ってあげる。これ、本当に辛くなったら飲んでみなさい」
そういって永琳は妹紅に一粒の薬を握らせた。
「……これは?」
「最終手段よ。気持ちを盛り上げたいときに使いなさい。ただ、本当はこんなのに頼らないで自分の力だけで頑
張った方がいいに決まっているのだから、そこは承知しておきなさいよ」
「あぁ、わかってる」
「次の授業は?」
「体育」
「貴方の得意分野じゃない。頑張りなさいよ」
「そうだな……」
運動は嫌いじゃないし、苦手でもなかったがどうしても妹紅は出る事が出来ずにいた。しかし永琳の言葉を受け、妹紅は次の体育からまた少しだけ頑張ってみることにした。
「いい顔よ」
不意に永琳が言う。
「え?」
「なんでもないわ。さ、もう教室に戻りなさい」
妹紅が教室に戻っていくのを確認すると、永琳も保健室に戻った。
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